株式会社 一柳アソシエイツ

構想エネルギー21研究会

2015.11.27 更新

一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第97回勉強会を開催しました

2015年11月25日 当社社長一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第97回勉強会の講師に、東京大学大学院 工学系研究科 電気系工学専攻 教授 中野義昭様をお招きし、『高効率太陽電池の現状と水素社会への展開』とのテーマでお話しを頂きました。

中野 義昭 氏

中野 義昭 氏

中野様は、東大工学部電子工学科を卒業後大学院に進まれ、博士課程修了並びに工学博士取得され、講師、助教授を経て現職に就任されています。昨年より当研究会の幹事になられています。IT系の電子工学の専門分野に加えてエネルギー分野との融合に研究領域を拡げて、2010年に異分野連携を志向する東京大学総括寄附講座「太陽光を基軸とした持続可能グローバルエネルギーシステム」の共同代表に、同じく当研究会副代表幹事の茂木源人東大准教授と共に就任されています。

冒頭、当プロジェクトの研究成果をまとめて説明されました。主な論点は以下5点です。
① 自然エネルギーは量としては充分ある。現時点では化石エネルギーに比べ高コストだが、技術と共にまだまだ下がり、化石エネルギーはいずれ上がる。
② 自然エネルギーは時間的、空間的に偏在することが最大の問題で、このためグリッド接続には限度がある。より大々的に導入するにはオフグリッド利用が本命で、蓄エネにより時間的空間的偏在性が克服できる。
③ 蓄エネ媒体は使い方によって決める。バッテリーは短時間小規模に向き、ソーラー燃料は長時間大規模に適している。
④ ソーラー水素は定置用、ソーラーLNGは輸送用とすることで、インフラ整備が進む前(今!)から脱化石燃料が利用可能となる。
⑤ CO2はいずれ、エネルギーキャリアとして循環再利用されるようになる(CO2の資源化)。

次に、資料に沿っての説明があり、論点や課題は以下の通りです。
① 太陽電池の理論限界変換効率は、従来のシリコン太陽電池が30%でほぼ限界に近づいている。一方、高効率太陽電池は70%でまだまだ伸びる余地があり、既に人工衛星に利用されている。
② 課題は低コスト化であり、虫メガネ集光型の太陽追尾技術の向上も課題であるが、日本の得意技である摺合わせ総合技術を活かしていきたい。更に、集光効率向上のために3,4層の多接合技術も進められている。カリフォルニアやアリゾナでは実用化されている。
③ 蓄エネの面では、ローカルでは太陽光エネルギーで水電気分解により水素を作りそれを貯めるのが一番である。グローバルでは太陽光が最も強い熱帯で太陽光エネルギーを集め、作った水素と二酸化炭素を結合しメタンなどのソーラー天然ガスにして長距離輸送を可能にする。
④ 地球温暖化対策面から縮小が唱えられている石炭火力発電についても、排出されたCO2とソーラー水素を結合してソーラー天然ガスを作れば地球温暖化対策に寄与する。
講義風景会議風景
                                       
その後の質疑応答やワインを飲みながらの懇親会では、高効率太陽光の商用化時期やそのための課題或いは水素社会実現のためのプロセスなどについて熱心な議論が交わされました。出席者からは、「電気と水素の変換ロスについて変換数を減らすのが一番とのことで、目からウロコの思いをした。」、「このプロジェクトの課題について国を挙げて解決すれば、日本の将来に明るい展望が持てる。」などの声が多くありました。

質疑応答風景懇親会風景

 


【講師略歴】
中野義昭氏プロフィール(学歴・職歴)
1982年3月 東京大学工学部電子工学科卒業
1984年3月 同大大学院工学系研究科電子工学専門課程修士課程修了
1987年3月 同大大学院工学系研究科電子工学専門課程博士課程修了,工学博士
1987年4月 東京大学工学部電子工学科 助手
1988年4月 同学部電気工学科 講師
1992年4月 同学部電子工学科 助教授
1995年4月 東京大学大学院工学系研究科電子工学専攻 助教授
2000年10月 同研究科電子工学専攻 教授
2001年1月 同研究科 電子工学専攻長,電子工学専攻常務委員,電子工学科長
2002年4月 東京大学先端科学技術研究センター 教授
2008年8月 同センター 副所長
2010年4月 同センター 所長
2013年4月 東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻 教授,現在にいたる
(その他)
2008年〜2015年 NEDO革新的太陽光発電技術開発事業プロジェクトリーダ
2010年〜 東京大学総長室直轄総括寄附講座共同代表
IEEE LEOS理事,応用物理学会理事,APEX/JJAP誌編集委員長,電子情報通信学会理事,同エレクトロニクスソサイエティ会長,光産業技術振興協会評議員などを歴任