株式会社 一柳アソシエイツ

構想エネルギー21研究会

2014.03.13 更新

一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第87回勉強会を開催しました。

2014年3月10日 当社社長一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第87回勉強会の講師に、野村総合研究所インフラ産業 コンサルティング部 上級コンサルタント 山内朗氏をお招きして、『欧州の電力・ガス等エネルギー市場自由化後の現状と課題-UKの新規参入者-』とのテーマで講演を頂きました。山内氏は、東北大学資源工学科大学院を修了後野村総研に入社され、事業コンサルティング部などを経て、近年はスマートグリッドやスマートハウスの実証を』通じ、再生可能エネルギーの有効活用政策やエネルギーデータを活用した新サービスの創出に注力されております。

本日は山内氏が昨年後半に、英国における電力・ガス事業の自由化後にユーティリティ事業に新規参入した事業者などを実地に調査した内容を中心にお話しを頂きました。

まず、英国の電力・ガスのユーティリティ事業環境について言及されました。
北海油田のピークアウト後、今後エネルギー輸入の急増が見込まれるためエネルギー効率の向上、
再生可能エネルギーの大量導入が不可避。
自由化後大陸欧州のビッグユーティリティの買収を経て大手6社による発電、販売ともに寡占状態。
6社は民族系2社と外資系4社(独資本2社、仏資本1社、スペイン資本1社)。
成熟した家庭用小売り分野では、シェア98%の大手6社の新たな問題として
ユーティリティ価格の上昇 消費者保護の観点からの規制強化 市場競争意欲の減退などが発生。

次に、シェア2%ながら、新規参入事業者たちの特徴や戦略についての話しがありました。
プリペイメントメーターによる供給業者で、コールセンターの充実と
メーター設置工事店とのネットワークにより全国展開。
金融とITのノウハウを駆使した利益モデルにより、分りやすさと透明性を確保しつつ
余剰の預かり金に利子還付を訴求。
エネルギー調達と販売両面で、徹底的にグリーンを追求する代わりに、
高コストでもグリーンエネルギーを欲する需要家を顧客にする戦略。

これらの英国の現状を踏まえ、自由化を控えた我が国ユーティリティ業界への示唆として
以下の指摘を頂きました。
市場からの調達がスムーズにできる取引市場が機能している電力と共に、
ガスにおいても全国規模で柔軟にできる調達市場の形成が不可欠である。
電気、ガスの供給は地域だけでなく全国の戦いであり、供給業者は全国で規模を拡大するための基盤や
顧客管理に仕組みを必要とする。
一方、自由化後の我が国の監視機関の位置付けが未定であり、将来消費者保護規制が掛けられたり
自由化後の省エネ政策などのコストが料金に反映させられる議論となる可能性がある。

その後の質疑応答や山内氏も参加された懇親会では、「シェア2%の新規参入業者の市場影響力は如何ほどか」「実需マーケットのほかに先物マーケットの形成が急がれる」「再生可能エネルギーのブームの後、これらの新規ビジネスの可能性は如何か」「我が国のガスパイプラインの全国ネットの完成は何時になるのか」など、様々な意見が交わされました。
2014.3.10会議風景

山内 朗 氏

山内 朗 氏

【山内朗氏略歴】
1989年、株式会社野村総合研究所入社
東北大学資源工学科博士課程前期修了
資源エネルギー研究部、社会システム研究部、
事業戦略コンサルティング部を経て現職。
エネルギー、公益事業分野の事業戦略、事業開発、制度検討に関わる。
近年は、スマートグリッド、スマートハウスの実証を通じ、
再生可能エネルギーの有効活用政策や、エネルギーデータを活用した
新サービス創出に注力している。