株式会社 一柳アソシエイツ

構想エネルギー21研究会

2014.09.05 更新

一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第90回勉強会を開催しました。

 2014年9月3日 当社社長一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第90回勉強会の講師に 公益財団法人 自然エネルギー財団 常務理事の大野輝之氏をお招きして、『持続可能なエネルギーシステムを目指して-ニューヨーク、カルフォルニア、東京-』をテーマにお話しを頂きました。今回は東京都環境局長のご経歴も踏まえて、ニューヨーク、カルフォルニア、東京などの自治体レベルの具体的な省エネや温暖化対策の説明を頂いてから、今後日本が採るべき方策についての提言を頂戴しました。

大野 輝之 氏

大野 輝之 氏

 冒頭、東京都環境局長時代に、世界の気候変動・温暖化による異常気象が続くと、東京でもデング熱が発症してしまうと警告を発していたとのご披露がありました。
4月に閣議決定された「エネルギー基本計画」で石炭火力発電を重要なベースロード電源と位置付けたことについて、CO2削減目標の為には推奨できないと指摘されました。これから石炭火力建設を進めても実際に稼働するのは2020年頃になり、ちょうど新しい気候変動対策の推進の足かせになりかねないとの懸念が大きいとのことであります。火力発電で推進すべきは、老朽火力の天然ガスコンバインド化であると提言しております。

 続いて、オバマ大統領が6月に気候変動の危機回避のためには、確認されている化石燃料の3分の2は燃やしてはいけないとして、2030年までには火力発電所を30%削減すべきとの方針を発表しました。具体的対策は各州政府に任されているので、ニューヨーク州とカルフォルニア州の実例の説明がありました。
ニューヨーク州を含む北東部9州の合意による地域グリーンハウス・ガス・イニシアティブ(RGGI)と云う火力発電所を対象にした排出量規制制度が実効を上げており、2013年までの5年間で経済成長と排出削減の両方の実現に成功しているとのことです。
カルフォルニア州のエネルギー政策のアクションプランは、第1順位がエネルギー効率化、第2順位が自然エネルギー分散型電力、第3順位がクリーンな化石燃料となっています。発電所ばかりでなく鉄鋼、セメント、石油精製等主要産業を対象に2013年よりキャップ&トレードを開始しています。この間、同州では自然エネルギーの拡大が進んでおり、本年4月には200万KWの原発の廃炉の代替は省エネと自然エネルギーで行うことを決定しているとのことです。

 次に、東京都の環境行政の説明がありました。東京都のCO2削減目標は、2020年までに2000年比25%削減することを2006年12月に規定しています。大規模事業所に総量削減を義務付ける条例を2010年に施行し、実績として2012年には22%削減に成功しています。

 今後日本に求められる対策として、以下の2点を指摘しています。
第1には、アメリカのACEEE(エネルギー効率経済のためのアメリカ協議会)調べのエネルギー効率の世界ランキングを見ると、第1位はドイツで第2位はイタリアで日本は第6位に留まっております。また、日本の製造業のエネルギー効率は約30年間改善が見られず、今後一段の改善が求められるとのことです。
第2には、自然エネルギーは基幹電源としての導入目標を更に高く設定すべきであると提案しております。現在の目標の「2020年に13.5%」は、今年度にも達成されてしまうもので、因みに、ドイツでは2013年に25%をクリアし、2020年に40-45%、2035年までに55-60%を目標にしています。

 質疑応答やその後の大野氏も参加された懇親会では、出席メンバーから「東京都の環境行政の実務経験に裏打ちされた大野講師の説明により、エネルギー問題と密接不可分な温暖化対策が良く理解できた」或いは「自治体レベルの地域経済活性化と自然エネルギー推進は両立可能である」などの声をお聞きしました。

湯本 登 氏

湯本 登 氏

 なお、今回の研究会メンバーによるショートスピーチは、当研究会幹事で㈱エネルギー環境研究所の湯本社長にお願いしました。テーマは『アフリカにおける再生可エネルギー取組の状況』です。ケニアにおける国営地熱開発会社やモロッコにおける太陽エネルギー発電或いはセーシェルにおける太陽光発電のネットメータリング制度導入更にはケニアにおける2011年からのDIY型の小型太陽光発電システムの販売など、様々な取組の説明がありました。

 

 

 


【講師略歴】
東京大学経済学部卒業
大野輝之氏プロフィール1979年東京都入庁。都市計画局、政策報道室などを経て1998年から環境行政に関わる。
2010年7月から3年間環境局長を務める。2013年7月東京都を退職。
2013年11月より現職。東京大学などの非常勤講師を務める。
イクレイ(持続可能な開発を公約した自治体で構成された国際的な連合体)日本顧問。
2014年カルフォルニア州から「ハーゲン・シュミット・クリーンエア賞」を受賞。