株式会社 一柳アソシエイツ

構想エネルギー21研究会

2015.03.12 更新

一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第93回勉強会を開催しました

 2015年3月10日 当社社長一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第93回勉強会の講師に原子力発電環境整備機構(NUMO) 理事長 近藤駿介氏をお招きして、『原子力の開発と規制並びにバックエンド』をテーマにお話しを頂きました。近藤氏は、永年東京大学で原子力工学の研究を推進され、昨年3月までの10年間内閣府 原子力委員会委員長を務められました。その後NUMO理事長に就任され現在に至っております。近藤氏は日本の原子力開発及び事業をリードされてきた方であります。

会議風景

近藤 駿介 氏

近藤 駿介 氏

 まず、3.11までの原子力政策を振り返りました。2003年のエネルギー基本計画で①原子力は安定供給に資するほか地球温暖化対策の面で優れた特性を有する ②安全の確保を大前提に、核燃料サイクルを含め原子力発電を基幹電源として推進すると位置付けました。2010年には、鳩山内閣で2030年までに原子力発電比率を50%まで高めるエネルギー基本計画を策定しました。

 次に、3.11で露呈した原子力安全規制行政の課題と対応について言及されました。
技術的には、同氏が永年提唱されている事故管理策としてのALARP原則(リスクは合理的に実行可能な限り出来るだけ低くしなければならない)が不十分であったこと、
組織的には、規制行政がリスク評価を避けたがり事故管理対策を内外の最新の知見に基づき改善する体系的な取組が遅れがちだったこと、
などを指摘されました。

 これらを踏まえ、2012年には「原子力基本法」を改正し国際性、安全の定義、規制委員会を導入して、「原子力規制委員会」を環境省の外局として設置しました。同時に、「原子炉等規制法」も改正し、新たにテロ対策や原則40年間の原子炉運転期間或いはバックフィット(既許可施設に対しても新基準への適合を義務付け)などを規定しました。
 
 更に、今後取り組む課題として以下の4点を掲げられました。
福島の再生・復興:これをしっかりやらないと東日本大震災は終わっていないとの認識が浸透しています。
安全神話との決別:運転者が十分に高い水準の安全性を不断に追及する努力を自律的に遂行する条件を整備すべきであります。
核燃料サイクル政策の着実な推進:エネルギーミックスで適切な規模の原発が一定期間継続されるのであれば、本件推進が可能となります。
高レベル放射性廃棄物の地層処分:安定な環境である深地層を利用した長期にわたる受動安全システムの構成が可能となります。

 本日の近藤氏のお話しでは、特に「原子力事業は有限であり、後世代に迷惑を残さないとの想いで放射性廃棄物などを検討しています」などの、冷静な語り口と心情の吐露に、参加者は感銘を受けました。また、オランダの放射性廃棄物の地上貯蔵施設では、期間100年の美術品の保管業務を併設しているとの説明に大いに興味を惹かれました。

 質疑応答では、原発再稼働について40年問題やテロ対策に関する突っ込んだ議論も出てきました。誠実なお答えを頂きました。その後、ワインを飲みながらの懇親会にも参加して頂き、再生途上にある我が国の原子力政策について、より率直な意見交換がなされました。


近藤駿介氏プロフィール【講師略歴】
1965年3月 東京大学工学部工学部原子力工学科卒業
1984年4月 東京大学工学部教授
1999年4月 東京大学原子力研究総合センター長
2004年1月 内閣府 原子力委員会委員長
2014年3月 内閣府 原子力委員会委員長 退任
2014年6月 原子力発電環境整備機構(NUMO)理事長