株式会社 一柳アソシエイツ

構想エネルギー21研究会

2015.07.22 更新

一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第95回勉強会を開催しました

 2015年7月16日 当社社長一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第95回勉強会の講師に経済産業省のお二人の現役官僚をお呼びしました。最初に資源エネルギー庁 審議官 吉野恭司様から『エネルギーミックス及び今後のエネルギー政策について』とのテーマでお話しを頂きました。次に先週研究開発課長から情報処理振興課長に異動された 渡邊昇治様から『エネルギー技術全般の開発状況について』とのテーマでお話しを頂きました。

吉野 恭司 氏

吉野 恭司 氏

 吉野審議官からは、本日資源エネルギー庁が決定しました
『長期エネルギー需給見通し』に則した説明がありました。
まず、『長期エネルギー需給見通し』の位置付けです。
エネルギー基本計画を踏まえて、エネルギー政策の基本的視点である、安全性、安定供給、経済効率性及び環境適合の S+3E について達成すべき政策目標を想定した上で、政策の基本的な方向性に基づいての施策を講じたときに実現されるであろう将来のエネルギー需給構造の見通しであり、あるべき姿を示すものであります。

 引続き、見通し政策の基本方針についての説明がありました。
S+3E に関する政策目標を同時達成する中で、徹底した省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電の効率化などを進めつつ、原発依存度を可能な限り低減させることであります。
【 S+3E に関する政策目標 】
安全性:安全性が大前提
自給率:震災前(約20%)を更に上回る概ね25%程度
電力コスト:現状よりも引き下げる(2013年度9.7兆円 ⇒ 2030年度9.5兆円)
温室効果ガス排出量:欧米に遜色ない温室効果ガス削減目標
その結果として、2030年度の電源構成は、再エネ22~24%程度、原子力22~20%程度、LNG27%
程度、石炭26%程度、石油3%程度を見込みます。

渡邊 昇治 氏

渡邊 昇治 氏

 渡邊課長からは、各種エネルギーに関する技術的並びに経済的観点からの課題について分りやすい説明がありました。主な論点を以下に列挙します。
太陽光発電:余剰電力対策が種々議論されていますが、そもそも余らせないための出力抑制をした方が、太陽光発電の導入量を増やせます。仮に、日本の電力需要を全て賄うにはデッドスペースを勘案し福島県の2倍の面積が必要です。
風力電力:洋上を含め潜在力が大きいとされますが、日本の陸上は北海道や日本海沿岸など適地が限定的です。条件の良いところから立地が進むため、今後、発電コストが下がらない可能性があります。不安定性や余剰電力、景観や騒音などの問題もあります。
地熱:地熱資源量は世界第3位と潜在力は大きいが開発が難航しています。温泉と競合しない深部の高温岩体が突破口になるかもしれません。
バイオマスエネルギー:原料の安定調達が難しく、マテリアル利用との競合もあります。バイオマス価格は石油価格に連動する可能性があります。
水素:多様なエネルギー源から製造可能で使い方も多様ですが、自動車用以外に発電用に利用拡大すれば、より低価格になることが期待できます。

 今回は、開始時間を繰り上げ、講演と質疑応答に約3時間フルに充てました。様々な業界から参加されているメンバーの業務に直結した率直な質問や当研究会役員の建設的な提案などについて、政策を立案し遂行する立場のお二人から率直な回答を頂き議論は大いに盛り上がりました。出席者からは、「エネルギーの政策、技術を、フルスコープで聞けて全体像をつかめたのは、初めての体験だ」、「こんなにフランクに官僚からご意見を聞けて有難かった」、「参加企業の課題なども聞けて大いに参考になった」との声が多くありました。

会議風景


【講師略歴】
吉野プロフィール● 吉野恭司 審議官
昭和62年4月  通商産業省入省(中小企業庁総務課)
平成 5年5月  在南アフリカ日本国大使館
平成13年1月  秋田県産業経済労働部次長
平成14年4月  秋田県産業経済労働部長
平成16年6月   経済産業省資源エネルギー庁長官官房企画官(電力・ガス事業担当)
       (併)電力・ガス事業部放射性廃棄物等対策室長
平成18年4月  経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部放射性廃棄物等対策室長
平成19年7月   経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部電力基盤整備課長
平成21年8月  旭硝子株式会社
平成23年7月   経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部原子力政策課長
平成24年12月  経済産業省産業技術環境局産業技術政策課長
平成26年7月   経済産業省大臣官房審議官(エネルギー・環境担当)

渡邊プロフィール● 渡邊昇治 課長
平成2年     東京大学大学院修士課程修了、通商産業省入省
電気用品室、自動車課、サービス産業課、情報政策課、中小企業庁下請企業課等の課長補佐
平成16年~20年 熊本県商工観光労働部
平成20年~23年 資源エネルギー庁新エネルギー対策課長
平成23年~24年 経済産業省住宅産業窯業建材課長
平成24年~27年 経済産業省研究開発課長
平成25年~26年 内閣府参事官(兼務)
平成27年7月  経済産業省情報処理振興課長(現職)