株式会社 一柳アソシエイツ

構想エネルギー21研究会

2015.09.07 更新

一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第96回勉強会を開催しました

2015年9月3日 当社社長一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第96回勉強会の講師に、昭和シェル石油株式会社 執行役員 石油事業COO 小林正幸様をお呼びし、『石油の需給と価格の動向について』とのテーマでお話しを頂きました。

小林 正幸 氏

小林 正幸 氏

小林様は、石油製品の輸出や原油輸入の業務に長年携わってきております。今回は、原油価格変動の5つのポイントのうち需要面と供給面に焦点を当ててお話し頂きました。5つのポイントとは、
①需要面(中国や米国などの需要の伸び)
②供給面1(OPECの思惑サウジ・イラン)
③供給面2(新たなSwing Producerとしてのシェールオイル)
④地政学リスク(複雑な中東情勢)
⑤原油先物市場に流入する投資マネー
です。

冒頭、ここ7年間の原油価格の推移についてのコメントがありました。40~140ドル/バレルの間で大きく変動しており、プロの目から見てもよく動いて来たなとの実感があるとのことです。
次に、IEA(国際石油機関)が発表している「世界の原油の需要供給推移と予測」に触れました。2013年までは、ほぼ一貫して需要が供給を上回って推移しました。その後の2年間は供給が需要を上回っていますが、OPECが足元の供給量を供給し続けると需給がタイトになるのは2016年第4クオーター以降と見ているとのことです。

需要面についての説明の主な論点は以下の3点です。
① 北米地区は、経済成長が鈍化しても原油価格下落の影響により需要が喚起されている。これは原油がドル取引となるので、価格下落の恩恵を米国が最も受けていることが原因と考えられる。
② 一般的には原油安は需要を喚起するものであるが、アジア新興国や産油国では燃料補助金削減の動きにより原油価格下落の恩恵が減少している。
③ 財政の苦しい中東やアフリカの産油国にとっては、安い原油価格が需要を伸ばす要因にはならない。

供給面についての説明の主な論点は以下の3点です。
① OPECの役割の変遷についての説明であります。1985年までは原油価格をコントールするカルテルとして機能していた。その後マーケットに追随して反応する方針に変更した。2014年7月以降はマーケットシェアを取りに行く方針に変更している。
② OPEC余剰生産能力の大宗を占めるイラン、イラク、サウジアラビアが増産に積極姿勢を示している。イランは核協議の合意を受け制裁解除が実現すれば、2016年に100万バレル/日の増産が可能になる。この量は2016年の世界全体の需要の伸び予測に匹敵する。
③ シェールオイルは、水平坑技術の進化やロングテール化などの生産性向上から、従来考えられていたものよりしぶとい存在になっている。
(注) ロングテール:従来2,3年で終了すると言われていたシェールオイル生産井が、生産開始3年後に生産量が15%程度に減少しても数十年間生産継続可能と言われようになっている。

締めくくりに、今後の原油価格の見通しについてお話がありました。
最近の原油価格低迷により開発投資が90兆円程度中止や延期に陥っていると言われております。現在の価格が2,3年後に関係者が居心地の良い価格と見ている70~80ドル/バレルに戻らなければ、2020年には穏やかな動きは期待されずに改めて100ドルを超えるような激しい動きも想定されるとの見解を述べられました。

その後の質疑応答やワインを飲みながらの懇親会では、環境影響問題や日本の石油産業の動向或いは米国以外の中国や欧州でのシェールオイルの開発見通し等様々なテーマで活発な議論が交わされました。出席者からは、「原油価格を巡る論点が良く整理されていて大いに参考になった。」、「シェールオイルの今後の可能性の見方が変わった。今後の業務の参考にしたい。」などの声が多くありました。

会議風景


【講師略歴】
小林 正幸 プロフィール昭和シェル石油株式会社 執行役員 石油事業COO 小林正幸 様
1981年3月 国際基督教大学 社会学科 卒業
1981年4月 昭和石油株 入社
2000年4月 昭和シェル石油㈱ 製品貿易部石化原料課 課長
2000年4月 シェルケミカルズジャパン㈱ トレーディング部 部長
2011年3月 昭和シェル石油㈱ 執行役員 供給部長
      兼 製品貿易部長 (原油船舶部門・海運担当) 
2013年3月 同 執行役員 供給部長 兼 製品貿易部長 兼 原油船舶部長
      兼 昭和シェル船舶㈱ 代表取締役社長 
2014年3月 同 執行役員 石油事業本部 
      (流通業務・製品貿易・原油船舶・海運・輸入基地担当)
      兼 昭和シェル船舶㈱ 代表取締役社長 
2015年3月 同 執行役員 石油事業COO 兼 昭和シェル船舶㈱ 代表取締役社長 (現職)